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奇跡の写真家"Vivian Maier" [雑記]

あなたは「奇跡の写真家ビビアン・マイヤー」をご存知ですか?
生涯を通して写真を撮り続け、亡くなった後に遺品のフィルムがオークションで売買され、そのフィルムを落札した男性に見出されるまで、スポットライトの当たらなかった人生を歩んだ無名のアマチュア写真家です。
(『写真家』というと語弊があるかもしれません。詳細は、後述します。)

Vivian Maier (photographer)

この人の写真が世に出てくるキッカケになった話が映画のようでとても興味深いんです。
映画になったら私は絶対見ます!(普段、映画なんて見ないけど。。)

いつものように以降の写真はビビアンとは関係ありません。

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Minolta Autocord III / ROKKOR 75mm F3.5 / Fujifilm NEOPAN ACROS / Y2 Filter

簡単にビビアンの事を書こうと思います。

1926年アメリカニューヨーク州マンハッタン、オーストリア生まれの父とフランス生まれの母の間にビビアンは生まれました。
両親の離婚をキッカケにアメリカとフランスを行き来する生活を送っていました。

そんな彼女は、1949年頃から写真を始めました。
最初に使っていたカメラは、コダックのブローニーボックスカメラ。
その後、Rolleiflex、Leica IIIcと機材を変えていったそうです。

1951年、家族を残したままフランスからアメリカへ移住。
ビビアン25歳のことでした。

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Minolta Autocord III / ROKKOR 75mm F3.5 / Fujifilm NEOPAN ACROS / Y2 Filter

アメリカではベビーシッターや家政婦として働きました。
1956年頃からシカゴ郊外高級住宅街にあるゲンズバーグ家の乳母兼家政婦として住み込みの仕事を始めました。
自分に与えられた部屋の浴室を暗室として改造し、暗室には鍵をつけて自分以外の人間が入ることを拒んだそうです。
どうやら彼女は、「変わり者」だったらしく、歯に衣着せぬような言動をされていたとかなんとか。
「私に関わらないで」と、人との距離感を持って接していたそうです。
その証拠に、撮った写真を誰にも見せようとはせず、個展も開かずといった感じで、生涯の間に撮った10万カット以上の写真は、彼女が生きている間に日の目を見ることはありませんでした。

ゲンズバーグ家3人兄弟の第2の母として仕事に励みながら、Rolleiflexで子供達を撮ったり、休みの日にはRolleiflexを持って街へ出かけたり。
この頃の作品(ストリートスナップ)の一部が現在インターネットを使って公開されているようです。

1959年には、休みをとって1人で世界旅行にも行っているそうです。
旅行先は、マニラ、香港、上海、北京、バンコク、シンガポール、インド、イエメン、エジプト、レバノン、シリア、トルコ、ギリシャ、イタリア、フランス。
もちろんその時の写真も残っているようです。
この時代にこれだけの旅ができて、しかも手にはRolleiflexなんて持ってるというのは、それなりの給料をもらっていたのでしょう。

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Minolta Autocord III / ROKKOR 75mm F3.5 / Fujifilm NEOPAN ACROS / Y2 Filter

そんな彼女も働き盛りを過ぎると、定職に就くことができなくなっていきます。
1970年頃、それまで勤めていたレイモンド家を離れると、以降の仕事先は、1年以上続くことはなかったそう。
その原因は、彼女の変わった性格。
ゲンズバーグ家やレイモンド家では、その性格を買われ仕事を任されていたようですが、40歳を超えた彼女に対して温かな目を向けてくれる雇い主がいなかったのかどうなのか。
それは、わかりません。

1980年代、1990年代と時が過ぎていくにつれ、乳母として、家政婦として彼女を必要とする場所は少なくなっていました。
定職につけない彼女の生活は、どんどん苦しくなっていきます。

彼女は結婚もせず、生涯独身でしたが、家を転々とする際には、大量のダンボールを持っていたそうです。
そのダンボールの中に入っていたのが、それまで彼女が撮影してきた、大量のネガフィルムやプリントだったのです。

その頃の雇用主の一人にビビアンはこんな言葉を残しているそうです。
「人生を持ってきてるんです。その人生は箱にしまってあります。」

あぁ、いい言葉だ。
私もそんなこと言ってみたい。

2007年頃、ビビアンは生活苦からアパートの家賃を滞納し、追い出されそうになっていました。
そんなビビアンに救いの手が。
行方知れずとなっていたビビアンを探していたゲンズバーグ家の成長した子供たちは、ついに彼女の居所を探し当て再会を果たしたのです。
ゲンズバーグ家の子供たちは、愛すべき第2の母にお金を出し合ってアパートを借りてあげるのでした。

2008年の末頃、ビビアンは、凍った道路で転倒し病院に運ばれる。
翌年の2009年4月21日、83歳で死去。
83歳と2ヶ月の生涯を閉じました。

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Minolta Autocord III / ROKKOR 75mm F3.5 / Fujifilm NEOPAN ACROS / Y2 Filter

ビビアンが死去してから間もなく、アパートを追い出された際に没収されたビビアンのネガやプリント、未現像フィルムは、貸倉庫からオークションハウスを経て、執筆中の本に使う古いニューヨークの写真を探していたジョン・マルーフ氏に渡りました。

写真に詳しくないマルーフ氏は、落札した大量のネガやプリントを見て最初はなんとも思わなかったそうですが、時間が経つにつれて、写真のクオリティがわかる人に相談したいと思うようになります。
まず、ビビアンの作品をスキャンし、ブログにアップ。
さらに作品について、Flickrで質問しました。

質問内容を噛み砕くと、「こんな感じの無名の写真家が撮った写真を大量に持ってるんだけど、私は、この作品で何をしたらいいかな?この作品は写真集や展覧会に出す価値があるのかな?」みたいな感じ。

その質問に対しての反響が凄かった。。
そして、その翌年からマルーフ氏の手でヨーロッパ、アメリカの各地で個展が開かれます。
そんなアメリカンドリームのような無名写真家の作品を見ようとたくさんの人たちが行列を作って並びました。

BBCやCBSもニュースで彼女を取り上げ、「TIME」や「Mother Jones」、「The Guardian」など、雑誌や新聞に記事が書かれました。

ビビアンの作品を見出したジョン・マルーフ氏は、ビビアンの生涯に興味を持ちはじめ現在では、仕事を辞めてビビアンの生涯を描いたドキュメンタリー映画を作ることを決意します。
映画製作の資金集めのために、KickStarterというサイトで出資者を募り、あれよあれよと予定資金が集まり、ドキュメンタリー映画を作成したようです。

その告知動画?がこんな感じ。



公式ページによれば、タイトルは、「Finding Vivian Maier」でComing soonとなってました。
公式のFacebookページでは、11/17(日)にニューヨーク市でプレミア上映されるようです。

ざっくりこんな感じです。
(すいません、英語苦手なんで間違ってるところもあるかもしれません)

ビビアンは、生涯、写真家になる考えを持たない人だったようで、彼女の作品は、鏡越しのセルフポートレートやショーウィンドウに反射する自分の姿、時には道端で大きな鏡を車から下ろす男性の後ろから自身の写りこんだ鏡を撮影するなど、本人からすれば、自分以外の人に見せる予定はなかったのでしょう。

ストリートフォトについても、路上でもめている人のスナップや道端で遊んでいる子供を撮影するなど、彼女の作品はほとんどが、「なんの変哲もない日常」なんです。
彼女にとって写真とは、「日常を記録するツール」だったんでしょうか。
日記のようなイメージ。

いやー、しかし、彼女の作品はどれもクオリティが高いです。
私もRolleiflexのコピーであるMinolta Autocordを使ってますが、あんな写真は撮れませんよ。。

「見てて飽きない」

この言葉に尽きます。
ほんと勉強になります。

そんな彼女の残したものは、ネガやプリントだけでなく、未現像フィルムも大量に存在するそうです。
いつ頃のフィルムかわかりませんが、40年近く経過していて現像できるのかな??(^^;)
そこも非常に興味深い。。

生前、苦しい生活を送っていた彼女。
その時に「自分の写真を売って生活しよう」という考えが少しでもあれば、今頃は名写真家として歴史に名を刻んでいたのでしょうが。。

そんな「奇跡の写真家ビビアン・マイヤー」の作品が世に出てきた物語が、雑誌「IMA」のVol3に載っています。
ぜひ、一度読んでみて欲しい。
オススメです。


IMA(イマ) Vol.3 2013年2月28日発売号

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: アマナホールディングス
  • 発売日: 2013/02/28
  • メディア: 雑誌




Vivian Maier: Street Photographer

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  • 作者: Vivian Maier
  • 出版社/メーカー: powerHouse Books
  • 発売日: 2011/11/16
  • メディア: ハードカバー




Vivian Maier: Self-Portraits

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  • 出版社/メーカー: powerHouse Books
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  • メディア: ハードカバー



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